妊娠中のすごし方
これが重要、まずは基本的な考え方から
妊婦の薬物療法って 出来るだけ害のない薬を選んでビクビク使うのかと私自身は思っていたのだけれど、ある妊婦授乳婦専門薬剤師の話を聞いて考え直しました。
何か問題が起こる確率がほんの少し上がることだけを恐れて、本来有るべき、お母さんの治療をおろそかにしてはいけない。なぜなら、出産はスタートであってゴールではないのだから。産んだあとのお母さんが健康でなければ育児も大変。
大事なことは病気を進行させないこと。
病気の治療を優先するがために妊娠を先延ばしにするのではなく、リスクの少ない薬を使いながら早いうちに子どもをもうけることで、ハイリスクになりやすい高齢出産を避け、生まれてくる子どもの先天異常や、流産率の上昇も回避する。
そうおっしゃっていたのが印象的でした。
妊娠かも・・・と思ったらすること
月経が遅れた時点で飲んでいる薬の継続の可否を決めなければいけません。まず、神経内科医に生理が遅れている旨を伝えましょう。あらかじめ指示を受けている場合(月経が遅れたら中止する、など)、その指示に従います。
月経が遅れてすぐに産婦人科を受診しても妊娠が確定するのはかなり先になります。妊娠5週目で胎嚢が見え、6週で胎芽が見え、7週で心拍が確認できれば順調。そこでやっと妊娠が確定です。(私は3~4日の遅れでフライング受診してよく怒られました(^^;)
でも、妊娠検査薬で陽性が出たら、ジストニアの治療中であることを伝えて早めに診てもらうのもいいと思います。
赤ちゃんへの影響を考えて、いったんお薬が中止になることもあります。その薬が、妊娠中ずっと飲めないものであるか、再開できるとすればいつからかなどは、神経内科医と産婦人科医に連絡を取り合ってもらい、よく話し合って決めましょう。紹介状を書いてもらうといいですね。
妊娠中のお薬と赤ちゃんへの影響
妊娠の期間を大まかに3つに分けて、最初の4ヶ月を第1三半期といいます。この時期は細胞分裂の早さがものすごく早く、また重要な神経や器官などが形成される時期でもあります。その中でも最終月経から35~50日の間は「絶対過敏期」といわれ、この時期に使う薬は慎重に選ばなければなりません。次の3ヶ月つまり第2三半期は、お薬の影響が次第に低くなりますが、まだ慎重であらねばなりません。第3三半期は比較的使えるお薬が多くなってきます。ただし、出産直前で、赤ちゃんの体の機能がほぼ完成した時期になっても、慎重に使うかまたは使えないお薬もあります。胎盤を通過したお薬が、赤ちゃんがお薬を飲んだような状態にしてしまったり、まだ完成していない体の機能の発達に影響があるかもしれないからです。
赤ちゃんへの影響は、上記のようにお薬を使う時期と、お薬そのものの危険性との両方を考慮します。
知っておいてほしいこと
もしお薬を使わなかったとしても、自然に流産する確率は15~20%、先天異常が発生する確率は3%と言われています。
すべてのトラブルがお薬のせいとはいえないし、また逆にお薬を使わなかったからといってトラブルが起きないわけではありません。
動物実験や過去の使用経験でわかっているもの(例えばサリドマイドなど)を除き、一般的に、そのお薬が奇形や異常をもたらすかどうかについて語られた論文は、自然発生で起こりうる確率と比較して多いか少ないかを言っているだけです。お薬を飲んでしまったからと、せっかく授かった赤ちゃんをあきらめるというような短絡的な結論は出さないでね。
使えるお薬・使えないお薬
ではどんな薬が使えて、どんな薬が使えないのか?
お薬の効能書き(添付文書)に「禁忌」と書かれているもの。たとえばボトックスはこれに当たります。また、ジストニアの治療に用いられる薬の中では、抗パーキンソン病薬の一部に禁忌のものがあります。これらの薬が本当に使えないのかは専門家の判断をあおいでください。
「投与しないことが望ましい」と書かれている薬も同様に確認が必要です。
逆に使えるお薬というのは、これまで多くの妊婦に使われ、安全性がほぼ確立されているものです。
さて、この中間に属する薬はとても多く、添付文書には「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」と書いてあります。こういう薬は、症状の度合いとお薬の危険度、服用時期によって飲むか飲まないかを決めます。
この判断はとても難しいですね。私的な意見を述べさせていただくと、病気の治療をしなければ、その病気が進行してしまうのであれば何らかの治療をしておいた方がいいですね。子育ては生んで終わりではないですから!生んだあとのお母さんが元気でなければ子育ては大変かと思います。しっかり治療して、その後、何年も続く子育てに気力・体力を残しておきましょう。
★悪い例★
私の場合は書痙なので、字が書けない、お箸がもてない、包丁を持つ手がぐらぐらする・・・ってのは、もう我慢に我慢でしたよ。字が書けなくて仕事ができなければ休職するつもり、あるいはクビになっても仕方ないな。お箸がだめならスプーンでもフォークでも。はずかしいなんて言ってられない。お料理ができない日はできあいのものを買ってくるのもありだし。とにかく開き直った。腹をくくった。お薬なしで何とかする!と。
私は出産前は神経内科を受診していなかったので、先生に相談したらもしかしたら飲める薬がいくつかあったかもしれない。症状がひどいときだけ飲むとか、的を絞って薬を使うのもありだったんじゃないかなぁ・・・と今では思います。本当に今思えば考えが浅はかだった。使える薬はたくさんあったはず。だから、みなさんはちゃんと先生と相談して納得いく方法を見つけてほしいです。
ずばり、ボトックスのこと
検索でここにたどり着いた方の多くはボトックスについての答えを求めているのかと思います。
私の知っている妊婦授乳婦専門薬剤師に聞いたところボトックスについての相談事例は今まで数件あったとのことです。患者さんはその回答に納得されて出産に至ったとのことです。
その答えはここに書くべきではないし、1つ1つの症例によって答えが違ってくる可能性があります。でも、相談する価値はありますのでぜひ下記の病院や妊婦授乳婦専門薬剤師のいる病院などでのご相談をお勧めします。神経内科の先生や産婦人科の先生はダメというかもしれないけれど、たくさんのデータを持っている専門外来のある病院で相談すれば、より安心かと思います。使えるものなら我慢しなくていいと私は思っています。
注:ここでは病気の治療のためのボトックスについて考察しています。ボトックスビスタをお使いの方は、申し訳ありませんが退室をお願いします。
それでも解決しないとき
妊娠と薬についての相談を行っている病院で相談するのもいいと思います。妊娠の予定があるならば、妊娠前に相談しておく方が安心ですね。
- 国立成育医療センター・妊娠と薬情報センター
この病院だけでなく相談を行っている病院のリストがあります。妊娠・授乳中の薬に関する情報も多数掲載されています。
妊娠期間は泣いても笑っても280日
妊娠期間は必ず終わりを迎えます。280日間。いや、280日-28日=252日。つまり30日×8ヶ月と10日あまり。終わってみればたいしたことないです、はい。赤ちゃんとつながっている時間は限られているから、我慢の時間のカウントダウンではなく、おなかに話しかけたり胎動を感じたりして楽しく過ごしてほしいなと思います。